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2010/12/04

その不必要なまでの記憶力に敬礼

ここ数日体調を崩していたんだけど、
今日ようやくよくなったのでぶらり散歩。

本当は天気もいいしガートに行こうと思ったんだけど、
マットレスとテーブル欲しかったから大通りをブラブラしていた。

イーバカフェでお気に入りのラップをむしゃむしゃ食べて、
ゴウドリヤ方面にのこのこ歩いていた昼下がり。

ぼけーっと歩いていたら後ろで誰かがわーわー言っていた。
でも誰かがわーわー言っていることは良くあることだから
全然無視して「あらこんなところにスイーツショップ」なんて思いつつ
優雅に散歩を楽しんでいた。

しかし、そのわーわーが全然遠ざからない。

それどころか、ますます近づいてくるし、
言っていることがヒンディー語じゃないような気がした。

なんだか気になって耳だけ後ろに向けると、
どうやらこう言っていたようだ。








「ヘイ!アーンジェーンピン!ヘェーイ!」

は・・・まさか。

この人、私に向かって安全ピンって言ってる?!

過去のブログにあるように、
私の変な趣味が招いた皮肉な結末。

がばっと振り向くと、満面の笑みのおじさん約一名。
私の名前を安全ピンだと信じて止まないその笑顔。

うう・・・良心が痛む。

「イヨォーゥ!アーンジェーンピン!ハウアーユー?!」

「ふぁ・・・・・ふぁーいん・・・」

「俺一目見て分かったぜ!お前が安全ピンだってこと!」

「あはは・・・サンキュー・・・」

「オートリキシャで一緒になったじゃないか!安全ピン!」

「・・・うんうん」

「あれ?どうした?人違いか?お前、安全ピンだよな?!な?!」







お前、安全ピンだよな?????




通常この質問に大してYesと胸を張って答える人は
いないだろう。

こんなのが教科書の例文に載っていたら
この教科書使えねぇ!って思うし、
そもそも世が世なら侮辱罪の適応範囲内だ。
ここがアメリカなら訴訟沙汰だし、
渋谷のギャルに言ったら「キモーイ」で一蹴されること間違いなし。

しかし、いまさら引くに引けない。

そもそも自分を偽って安全ピンと名乗ったのは私なのだ。
日本人たるもの二言があってはならない。
私が安全ピンであることは彼の中では絶対だ。
安全ピン=私のアイデンティティでもある。

安全ピンある故に我あり、だ。

彼にとって私が安全ピンであることは火を見るより明らかだし、
そのことは「一目見て安全ピンだと分かった」と豪語している
彼の言葉から用意に予測できることである。

故に、私は自らを安全ピンとして名乗り、
安全ピンとしての役割を全うしなければならないと言うわけである。

証明おわり。

というわけで、もうどうでもいいよ!と半ば投げやりになった私は
彼の希望を打ち砕くことなく安全ピンとしての生を全うすることにした。




「イエース!マイネームイズ 安全ピン!」



その瞬間、まさにその刹那。


日本人旅行客がずっとこっちを見ていた。

あ・・・と思ったときには既に遅し。
去っていく日本人旅行客の口には明らかに冷笑が浮かんでいた。

誤解を解きたいとも思ったが、徐々に遠ざかる彼らの背中を
ただただ安全ピンとして見送るしか出来なかった。

「俺たちはベストフレンドだ!な!安全ピン!」

このときほどインド人を鬱陶しいと思ったことはない。

そして愛しいとも。

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